+CLOTHETによる売上も顧客体験も向上するCRM・MAツール運用術とは?

導入背景
- 顧客数の増加に伴い、EC中心のD2CブランドとしてCRM・MA施策を本格化すべくStoreCRMを導入。
課題
- メール配信の手間やパーソナライズの限界、広告費の高騰により、既存顧客への効率的なアプローチが必要だった。
効果
- セグメント配信でCVR4.5倍、誕生日メールで売上40%増、StoreCRM経由の売上は前年比5倍を達成。
160年以上の歴史を誇る繊維商社のスタイレム瀧定大阪株式会社が展開するアパレルブランドの+CLOTHET(クロスクローゼット)。ECを中心とした製品の販売を行うD2Cブランドとしてスタートしましたが、お客様の増加に伴い、CRM・MAツールによるメールの自動配信施策を本格化させたいということで、StoreCRMをご導入いただきました。※1 ※2
元々メールマガジンを中心としたマーケティング施策を得意としている+CLOTHETですが、昨年よりStoreCRMによるシナリオメールの配信を開始し、メールとSNS経由の売上は前年同月比で150%の成長を実現しています。最近では、StoreCRMによる特定の顧客セグメントへのメールマガジンの配信も行うようになり、大きな成果が出ているようです。※3 ※4
※1 CRM:顧客情報を一元管理し、最適なコミュニケーションで関係性を強化し、売上を最大化する仕組みです。
※2 MA:見込み顧客の行動データをもとに、最適なタイミングで自動的に情報配信などを行う仕組みです。
※3 シナリオメール:顧客の行動や属性に応じて自動配信される段階的なメール。
※4 顧客セグメント:共通の特徴や条件で顧客をグループ分けすること。
インタビュイー
スタイレム瀧定大阪株式会社
事業本部 第二事業部 ガーメント3部
+CLOTHET課 課長
岡田敏雄 様
ー+CLOTHETについて教えてください。
我々はもともとは繊維の商社で、生地を日本のアパレル企業や海外ブランドに販売するのがメインの会社になります。私自身も約 20 年近く、アパレル各社に生地を納める側にいました。
その中で、私たちも「自分たちのブランドを立ち上げ、直接お客様に届けたい」と考え、7 年前に+CLOTHETをスタートさせました。世界中から選び抜いた高品質な生地を、お客様へダイレクトに届けたいという思いが原点です。
ー+CLOTHETの特徴はどのようなところでしょうか?
圧倒的に素材へのこだわりですね。会社の歴史的に、世界各国の取引先から原料を調達できる強みがあり、それを D2Cで “良いものを手頃な価格で” お届けしている点が、ブランド最大の売りです。
ーブランドを立ち上げるにあたってD2Cという形で立ち上げた経緯を教えてください。
生地をアパレルさんに販売するだけでは、既存の会社のビジネスと変わりません。それなら、より良い素材をできるだけ原価を抑えてお客様に届けることが必要だと考えました。店舗も極力持たず人件費などのコストをかけず、EC中心で展開することにしたのです。
ーEC立ち上げ時に検討したこと、特にShopifyを選ばれた理由は?
当時(選定した頃)は Shopifyが今ほどメジャーではなく、日本語の情報も少なかったのですが、初期費用が抑えられアプリ拡張のバリエーションが豊富だった点に魅力を感じて、トライアル的にスタートしました。実際にShopifyでスタートすることには勇気がいりましたが、結果的には良かったと思っています。
店舗を持たないブランドとしての展開を考えていたので、商品を実際に手に取ってもらえない中で、素材の良さ・こだわり・ストーリー をどう伝えるかには苦労しましたね。
ーメールマガジンでのマーケティング施策を得意とされていると思います。施策の方針について教えてください。
ブランドのフィロソフィーや雰囲気を一貫して崩さないことが最優先です。すこし言葉で表現しづらいのですが、真面目なブランドなので、それが一貫してブレないようにすることを常に考えています。
配信タイミングについては、毎日メールを配信しているようなブランドさんもいらっしゃいますが、+CLOTHETではメリットを感じていただける情報があるタイミングだけに絞っています。
ブランド立ち上げ時は商品の数も少ないので頻度は週に1 回、現在はブランドの成長に伴い商品やコンテンツが増えたため、週2〜3回程度に増えましたが、あくまで伝えたいことができたら配信しようというポリシーです。
効果測定は毎週・毎月で 開封率・クリック率・コンバージョンによる売上をチェックしています。

ーCRM・MAツールの導入前の印象と、導入後の変化は?
もともとそのようなツールがあることは知っていましたし、導入したいと思っていましたが、ある程度の規模の配信対象となるお客様が集まらないと効果が出ないのではと思っていました。
ちょうどブランドを開始して5年経ったぐらいのタイミングで、実際にCRMやMAによるシナリオメールのような施策を始めようとなりました。+CLOTHETの中で、一番コンバージョンが生まれるチャネルがやはりメールということもあり、その強化という面もありました。
導入を決めたタイミングでは、ようやく顧客のセグメント分けなどをして、こんなお客様がいるのかと眺めて『このセグメントの売上を増やしたいな』と考えているだけでした。StoreCRMをインストールしてからは、離反していたお客様に再訪いただくにはどうしようか、というのを自分たちの力でRFM分析などを活用して実現できればなというふうになりました。※5
※5 RFM分析:顧客の購買履歴を「最近・頻度・金額」で評価し分類する分析手法。
ちょうど先月初めて、今年になってまだお買い上げいただいていない方へのセグメント配信をしたら、思っていた以上にコンバージョンが生まれました。通常のメールマガジンと比較すると、メール内のリンクのクリック率は2.6倍、CVRも4.5倍になっておりセグメント配信の効果を実感しているところです。さらに繰り返し同様の施策を行おうと思っています。
シナリオ配信は、現在5本ぐらいを動かしています。+CLOTHETの場合、ブランドの特性として2回目の購入を翌月や翌々月にされるお客様が一定数いらっしゃいます。他社よりペースが早い傾向があるので、これをさらに強化することを考えて自動配信を行っています。
例えば、サンクスメールとして購入の2週間後に、お買い上げいただいたアイテムのお手入れ・洗い方などのコンテンツを配信していますが、そこからも買っていただけることが多いです。やはり細かな接点を作るのは大事だなと感じています。※6
※6 サンクスメール:購入や申込直後に自動で送る感謝のメール。
また、お誕生日メールについても我々は月初に1回目のメールを送り、25日に月初に送ったクーポンをまだ利用していない方に限定して2回目のメールを送っています。2回目のメールを送ることで、買い忘れをかなり拾えており、送らない場合と比べると40%も売上が上がっています。
メールとSNS経由の売上は、前年同月比で150%に成長しています。広告経由の売上が落ちている一方、メールやSNS経由の売上が成長しているのですが、この売上増加にはStoreCRMの効果がかなり大きいです。
StoreCRM経由の売上も、去年と比較してシナリオの運用などを適切におこなえるようになったので、こちらは前年同月比で5倍になっています。

ーLTVを向上させるための試みは行っていますか?また、LTVの変化はありましたか?
正直、概念としては理解していましたが、これまでLTVを向上させる取り組みはできていませんでした。しかし、改めてここに注力していこうという方針となり、数値を注視するようになってきています。3〜4年前から比較するとLTVは2倍に成長していますし、大事な指標になってきています。※7
※7 LTV:顧客が取引期間中に企業にもたらす累計利益や売上の指標。
例えば、オフラインのイベントにいらっしゃる方は、そうでない方と比較してLTVが1.5倍ほど高いです。CRMを活用することで、Tシャツをご購入いただいたお客様には相性の良いアイテムをご提案したり、サイズや形違いもご案内する、ニットをお買い上げの方にはコーディネート用のパンツをおすすめする、といった施策をシナリオに組み込んでいます。ECの場合は対面でご提案できない分、こうしたシナリオを通じてLTVを伸ばす施策として動かしています。

ーCRM・MA施策を実際に運用してみて、お客様との関係にはどんな変化がありましたか?
正直、最初の頃はそこまで効果が出るのかな?と思っていました。自分が顧客側だった場合、バンバンメールが来てもあまり見ないので、実際にはどんな効果が出るのかと思っていました。実際に運用してみたところ、かなり反応が良かったです。我々のブランドはメールを送る頻度もそんなに多いわけではないと思うのですが、それでも目に見えた効果があるのが良かったなと思っています。
加えて、お客様との距離が縮まっているようにも感じます。内容も商品のケアなどお客様に寄り添うような印象付けを心がけているので、今の調子で運用するシナリオも増やしていけたらなと思います。
オフラインのイベントもシーズンに数回行っているのですが、そこにいらっしゃるお客様も、実際にメールを見られて来ていただいた人もいるし、好意的なリアクションをいただけているので、CRMというチャネルがお客様との関係構築という点でもブランドの強みになってきたなと感じています。

ーLINEではどのような施策を行っていますか?
ブランドがスタートした頃は、LINEについては積極的ではなかったのですが、CRM施策などの強化の一環でLINE公式アカウントの友だち数も増やしていこうという方針になりました。ブランドの傾向としては男性のお客様が多いのですが、メールよりもLINEを利用される方が増えてきたのではという仮説があったので、友だち追加を促す施策を行っていきました。
まだメールの方が会員数的には多いですが、売上だけで見るとメール経由とかなり近いところまで上がってきました。なのでメールと同様にLINEの配信も行っていますし、リッチメニューについても定期的に変更するように心がけています。
ー昨今の広告費の変動と、CRM施策の重要度の変化はありましたか?
以前より広告費は全体で20%ほど増やしていますが、世界的な影響かもしれませんがCPAが上昇して、予算を増やした割には効果が出ていない状態となっています。新規顧客向けに予算の8割を割いていますが、こちらの効果が薄くなって苦戦しています。※8
※8 CPA:CPA(Cost Per Acquisition)は、「1件の成果獲得にかかった広告費」の指標です。
一方で、今年からCRMが、広告・メルマガと並ぶマーケティングやプロモーション施策の3本柱の一つとして位置づけられるようになってきました。2年前はCRMの施策も行っておらず、担当者がいませんでしたが、現在ではメルマガの配信やアプリの管理などをする専属の担当者を1人おいています。
ー今後実現したいCRM施策はありますか?
正直なところ、まだ使い始めた段階だと思っています。まだまだ機能を使い切れておらず、ポテンシャルを引き出せていないと思っていますが、離脱してしまったお客様の掘り起こしや、オフラインで接点を持ったお客様との関係を深めるような施策もやっていきたいですね。

